梅梅
新年の御挨拶
 新年明けましておめでとうございます。
 昨年九月末の内閣改造におきまして、経済産業大臣に再々任致しました。平成十二年七月に当時の森内閣に通商産業大臣として入閣以来ですから、もう早いもので二年半以上になります。昨年十二月十一日には、それまで田村元先生が持っておられた通産(経済産業)大臣の連続在任記録(八九〇日)を更新させていただいたところです。(ちなみに最長記録保持者は河本敏夫先生で昭和四九年七月〜昭和五一年十二月と昭和五二年十一月〜昭和五三年十二月で計一一二二日)
 一部に持ち直しの動きが見られるものの、わが国経済は現在も本当に深刻な状況が続いています。特に中小企業を取り巻く経済金融環境は、金融機関の貸し渋り、貸しはがしなどにより厳しさを増しております。経済産業省といたしましては、現下の厳しい経済環境の中、やる気と能力のある中小企業に対する金融セーフティネット対策に万全を期するとともに、創業や新事業展開への果敢な挑戦を後押しすることに致しております。昨年取りまとめられた「改革加速のための総合対応策」、そして、これを補完・強化する「改革加速プログラム」や14年度補正予算に所要の施策を盛り込んだところであります。

photo  具体的には、まず、金融セーフティネット対策については、先の臨時国会でセーフティネット保証を拡充するため中小企業信用保険法を一部改正いたしましたが、今後とも、信用保証制度、政府系金融機関による融資および中小企業の再生支援を充実して参ります。
 また、創業や新事業展開への挑戦については、それを資金面や組織面で抜本的に支援する中小企業挑戦支援法を先の臨時国会で制定致しましたが、本年も、実用化技術開発支援や、創業塾などの人材育成支援策等を充実することと致しました。我が国経済の根幹を支えていただいている中小企業をしっかり守り育て、将来に向けて安心していただける環境の実現に向けて今後も全力を傾注して参る所存です。
 しかし私は、日本の前途は悲観するばかりではないと思っています。叡智と努力を結集すれば、眼前の難題も必ず打破出来ると信じています。何よりも我が国には天然資源こそありませんが「人材」という素晴らしい資源があります。国に膨大な借金があるとは申しながら、全て国内からの調達でありまして、外国から借金をしている訳ではありません。日本は一千四百兆円を超える世界最大の個人資産、四千億ドル(約四十八兆円)を超える外貨準備高を有しており、貿易の国際収支は常に黒字です。また世界最大の債権国であり、アメリカの国債だけでも三千九百億ドル(約四十七兆円)も保有しています。こんな国は世界の何処にも存在しません。マスコミ報道もマイナス面を強調するばかりでなく、明るい材料などをもっと取り上げて国民の不安を少しでも払拭する姿勢があってもよいと思います。

photo  そして皆様にぜひとも思い出していただきたいのは、今日の我が国の繁栄や素晴らしい社会資本、我々が持っている財産の全ては、全てあの昭和二〇年八月の敗戦の焦土の中から営々として築き上げてきたものだということです。
 敗戦の廃墟の中から我々は立ち上がることが出来ました。あの時と較べて現在の方が厳しいと言うことは無いはずです。そしてまだまだ日本には技術面での優秀性、蓄積されたポテンシャリティがあります。
 私はそう言う意味で政治がしっかりと安定して、きちんとした政策を着実に実行することにより状況が好転することは十分に可能であると考えています。
 そしてそれは日本一国だけのことには止まりません。世界の中、特に開発途上国の国々が日本に期待している面は本当に大きなものがあります。そして我が国の将来も、世界の他の国々が安定して円滑な発展を遂げてこそ初めて安定したものとなります。その意味で日本が経済面だけでなく、様々な面で国際社会に果たさねばならない役割というものが非常に重要になっていることも忘れてはなりません。

photo  昨年もなかなか明るい話題に乏しく、なんだか殺伐としたことが多かったような印象があります。世界的にも紛争やテロリズムや凶悪犯罪に関する悲惨なニュース、それも今まででは考えられなかったような無残な内容には驚かされるばかりです。そして日本においても、人の生命を奪うことへの禁忌やためらいなど感じられない犯罪が、まるで当たり前であるかのように新聞・テレビなどで毎日のように報道されていることは誠に憂慮に堪えません。人類社会全体に、将来に対する「不安」という暗い影が投げかけられているようです。まるで数年前から世界のどこかでタガがはずれてしまい、ギリシャ神話に出てくる邪悪なものが押し込められていた「パンドラの箱」の蓋が開けられてしまったかのようにさえ感じられます。
 しかし現代に生きている我々には、暗雲を払い未来への責任を果たす義務があります。それがどんなに困難に見え、不可能にさえ感じられようと、叡智を結集し勇気をもって立向わなければなりません。希望は必ずあります。前に進む努力を放棄することは、「未来」を捨てることになってしまいます。現代を生きている人間として、政治家の一人として、私は決して諦めることなく前向きに進んで参りたいと思っています。
 テロや犯罪に限らず「目的のためには手段は問わない」という考えが社会に広がっているよう思えてなりません。「結果オーライ」であれば、何でも有りでよいという考え方です。現実はゲームの世界と同じように「試してみて駄目だったらリセットすればよい」というものではなく、人の命と同様に失われてしまうと二度と元には戻らないものも多くあるのだと言うことが無視されているかのようです。

photo  何かを守るにせよ、変えるにせよ、きちんと流れを見極める必要があります。そのもののルーツと現状、そして将来のビジョンを勘案した上で行動することが重要です。行き当たりばったり、短視眼的であっては本当の目的を達することは非常に困難であり、結果として様々な矛盾が生じて禍根を残すことになります。しっかりとしたぶれない「座標軸」と筋道がとおった「道理」がなければ物事を成すことは出来ません。
 邪道・覇道・王道という三つ言葉があります。邪道は文字通り道理を外れた邪な方法、覇道とは力で他者を制圧して強権を振るう方法です。邪道、覇道を用いて得られる結果は例えスピーディーで効果があるように見えたとしてもそれは一瞬のことであって、やがてより大きな混沌を招くことになります。時間が多少掛かろうとも多くの人々の叡智を集めて道を一歩一歩進んでいくことが実は一番の早道であり、権力や武威で他者を制圧したりエゴを押し付けるのではなく、徳と道理をもって物事を進めていくことこそが王道であると思います。世相にはびこる邪道・覇道から王道へと立ち戻ることこそが何よりも求められているのではないでしょうか。昨年ノーベル賞を受賞された二人の日本人の方の今日までの生き方を拝見して、あらためて強くそのように感じました。

photo  現在、経済産業省の大臣室の壁には、私の養父・平沼騏一郎の実兄で私の曽祖父にあたる平沼淑郎(一八六四〜一九三八 津山出身。早稲田大学第三代学長などを務めた教育者・学者)の「正鵠(せいこく)」と書かれた扁額を掛けています。法曹界出身の平沼騏一郎の固めの几帳面な楷書体とは一味違い、教育者であった平沼淑郎の書体はやや丸味を帯びていて、何事にも大らかで天衣無縫に明るかったという曽祖父の人柄が伝わってくるようです。
 この「正鵠」という言葉には、「弓矢などの的の中心」のほかに「目当て、要所、急所」、そして「物事が正しいこと」という意味があります。毎日その額を観ながら「物事の要諦をしっかりと見極めて、物事を正しく行うべし」と叱咤激励を受けているように感じています。
 新しい年を迎えるにあたり、本年も新たな気持ちで安逸に流されること無く、日々精進努力をして参りますことを、あらためて肝に銘じております。
 皆様におかれましてもご健勝にてご活躍されますこと心よりお祈り申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

平成15年(2003) 初春
経済産業大臣
自由民主党岡山県第三選挙区支部長
平沼 赳夫

address お問合せはこちらまで
info@hiranuma.org

Copyright(c)2000 HIRANUMA office - All rights reserved